成すこと、根差す場所

写真集

どこで暮らしても
著者:仁科勝介

ネットで予約注文していた、仁科勝介さん(かつおさん)の写真集が届きました。

本の中身を見る前に、写真集に添えられていたお手紙をじっくりと読ませていただきました。

シャイで、誠実で、真心のこもった、素敵な文章……。
いいなあ……読んでいて心地がいいなあ……。

うん……うんうん……そう……そうなんですよ……。

自分が自分らしくいられるその場所に、どんなに影響力の強い属性が付いていたとしても、それは本当は、誰にとっても、あんまり関係のないこと、のはずなんですよね。

高校生や短大生のころ、同級生から、「あなたは恵まれているね」「本気でうらやましい」と言われたことが、何回かあります。

私が抱えている家庭の問題を知らずに、私の住んでいる土地の、本当に大したことのない、ちっぽけな属性だけを見て、そう言ってくる人が、何人も何人もいました。

当時の私は、「君たちには、私がそんなに幸せそうに見えるのかい。なんなら私と代わってみるかい」と、冷めた気持ちで、その無邪気な言葉を受け止めていました。

ふと、そんなことを思い出しました。


写真の中でいちばん目をひかれたのは、黄色い落ち葉の写真でした。

見た瞬間に、心がふわっと軽くなるような感じがしました。

個人的な好みの話になりますが、黄色って、私はあんまり得意な方ではなくて……、現実の世界でも、ゲームの世界でも、黄色い服は真っ先に避けることが多かったりします。

しかし、この写真にうつっている葉っぱからは、私が避けたがっているものにありがちな、「僕を見ると元気になるよ!さあ、今すぐ元気になって!」みたいな押し付けがましさを感じませんでした。

ただ、秋風にそっと揺れるコスモスのような、繊細で軽やかな優しさだけが、私の心に届きました。

あと、私も、つい落ち葉に目をやってしまう方なので、なんだか親近感を覚えました。

そう、しかも、そういう時に限って、知らない人から「えっ、何を撮っているんですか?」って声をかけられたりして……。

ただの落ち葉を撮っちゃ悪いのか!「いいね」をたくさんもらえそうなモチーフしか撮っちゃいかんのか!!落ち葉ごときに心を動かされた私がそんなにおかしいか!!!って、心の中が大雨になることも、ええ、そうなることも、あることにはあります(笑)


うまく伝えられるどうか自信がないのですが、とても印象深いことがあったので、最後にこれだけ言わせてください。

写真集のページをめくる度に、まるで、かつおさんの自伝を読んでいるような気持ちになりました。

私は写真に詳しいほうではないので、これが良いことか悪いことかさえも分からないんですけど、なんかこう……、写真を撮った人は、写真にはうつっていないはずなのに、写真の中に、写真を撮った人がいる、みたいな、そんな感じがして……。

パソコンやスマホの画面越しだと、「かつおさんの写真、いいなあ」と思うだけだったのが、紙になると、「かつおさんがいる……いないのにいる……なんだこの感覚……!!」といった、不思議な感動が押し寄せてきました。

これまた無責任なことを言っているなと自覚しつつ言いますけど、もしかしたら、この不思議な感動こそが、写真集の、ひいては写真の醍醐味なのかもしれませんね。

かつおさん、ひとりひとりのささやかな営みに向けたファンレターのような、素敵な写真集をありがとうございます。

私にはこれといった特技はありませんが、私も、それなりに好きでやっているこのブログを通じて、等身大の自分と演出したい自分、両方の世界観をお届けできるよう、これからも頑張ります!

Thanks for your time!


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